二四時間体制の畳屋

きれいな天然石があしらわれた、赤、白、チャコールグレーの三種類の時計が紹介された。用意された時計は、合計で五〇〇〇個。番組開始からわずか五分後、セールスプロデューサーの許に情報が入った。ホワイト四〇〇、レッド二五〇、チャコールニ○○。まさに飛ぶように売れている。一〇分後には、オーダー数が一気に二〇〇〇を超えた。セールスプロデューサーの「ここでチャコールグレー完売です」の指示が、アナウンサーに伝えられた。売れ行きをチェックしていたムラキさんも、大満足の様子だ。三二〇名のオペレーターを擁する巨大コールセンターにも、電話が殺到していた。購入希望者から電話を取ったセールスプロデューサーは、それをスタジオに回す。アナウンサーが購入希望者と話し始めた。


「お待たせしました。こんばんは。。お客さまのお名前は?」「由美子です」「今回は、どの時計をお選びいただきましたか?」「レッドです」「どんなお洋服に合わせようと、お考えですか」「黒でも、いいかなと思って」アナウンサーはすかさずスタジオに用意されていた洋服の中から黒いものを選び、赤い時計を合わせる。「いいですね。里一のブラウスに、赤の時計がワンポイントになって、人目を引きますね」究極の対面販売だ。二〇分過ぎには、赤も売り切れた。残りは白だけ。「もう間もなく、ご用意できる数が二〇〇を切ります」アナウンサーの声に後押しされたかのように、四〇分すぎには、全てがソールトアウトとなった。一時間かけて売るつもりが早々と終了したため、アナウンサーはすぐにバックアップの商品の紹介に移った。


わずか四〇分で、五〇〇〇万円近くを売り切ったのである。ムラキさんは、こう言い切った。「景気が悪いなんて思ったことは一度もない。人にとって消費は快楽だから。良いものがあれば、止められない」深夜一一時、大阪の街で、一台の軽トラックが和食チェーンのお店に着いた。すぐさま運転手たちがお店に入って、汚れたり痛んだりした畳を運び出していた。この日、運び出さなければならない畳は一九枚。店の人が終電で帰るまでの一五分間で行わなければならなかった。回収された畳は、兵庫県伊丹市にある巨大畳工場に持ち込まれた。この工場では一日最大で一六〇〇枚の畳を張り替えることができる。


先はどの畳は徹夜で修復され、翌朝一一時までに元のお店へ運ばれる。ちなみに畳一九畳の張替え料は一一万四〇〇〇円。二四時間体制、一晩で畳を張り替える深夜サービスを二〇〇一年から始めたのが、TTNコーポレーションである。この深夜の畳ビジネスが飲食店などに受けて、急成長した。年商は始めた当時の四倍以上の二二億円に達している。ジリ貧だった畳店をアイディア一つで盛り返したのは社長の辻野秀人さん(五五歳)だ。「不景気になって、飲食店は休まなくなった。畳を替えたくても、閉店後からオープンまでの深夜にやっている畳屋はなかった。そういった市場はガラガラに空いていたわけです」深夜の畳ビジネスは、まだまだ認知されていない。社長の長男で常務の辻野佳秀さんは、営業に駆け回っている。ある日、神戸の割烹ホテルに出向き、初めての商談に臨んだ。お客のいなくなった時間帯で、畳の張替えを行えることを伝えると、感触は良かった。ホテル側も「フットワークの軽い畳屋さんつて、いないんですよ」と話していた。


深夜に狙いを定めたTTNコーポレーション。首都圏にも二四時間体制の畳ビジネスを拡大していく予定である。静岡県浜松市の国道沿い、夜九時すぎ。ほとんどの店が閉まったなかで、煌々と明かりを放つビルがあった。その光に吸い込まれるように、夜な夜なたくさんのお客が集まってくる。雑貨屋ブルドック葵東店。三〇〇坪の広大な建物に、五万アイテムの雑貨がならんでいる。ディスカウントの店ではない。若い女性に人気がありそうなバックやアクセサリー、キャラクターグッズなどが売られている。営業時間は、午前一一時から午後一一時まで。しかし、何といっても夜が人気だ。




— posted by wgft at 06:02 pm