アメリカとフランスの比較

図見ると、まず一方では政治的不安定によってフランス政府の中央集権化が進むとともに、中世的分権の性格を持っていた、封建的支配体制の権威が、部分的に崩壊し始めたことが表されている。それと同時に他方では、新しい経済力を獲得した中産階級と農民が、経済的および社会的地位を獲得し始めている。それは中世から近世に向けて、これらの階級が社会的に力を獲得してくる過程であった。


しかし注目すべきことに、厳しい圧制の下にある人民は、無力感に打ちひしがれて欲求不満すら、持つ余裕のないものであるとトラヴィルはいう。これに対して圧制から逃れて社会的な。力を獲得しつつある階級は、客観的条件が改善されるにつれて、むしろ要求水準を高めて欲求不満を増大させるという。フランス革命前のブルジョアと農民とは、まさにこのような状態にあった。


彼らは封建的権威の部分的崩壊という条件の下で、社会的、経済的な力を獲得しながら、なお自らが完全に解放されていないという意識を高めて、欲求不満を高めていった。その結果は諸階級、諸集団間の孤立化と闘争の激化であり、封建的なものは全て革命によって、否定されなければならないという過激なイデオロギーの発生であった。そしてこれらの条件が積み重なって、フランス革命が生じたのである。


もちろんトクヴィルの分析は、このようなフランス社会の研究だけで終るのではない。彼は常にフランスの事例とアメリカの事例とを、比較しながら議論を進める。それはアメリカが、フランスと完全に逆の経過を辿った事例だからである。さて図は、同じ変数が完全に逆の値をとったアメリカ社会の、分析モデルである。すなわちアメリカ国内には、フランスにおける中央集権化の過程とは逆に、地方分権の伝統があり、国民は個々の町における積極的な政治参加を通じて、連邦政府を支えていた。このような伝統を背景に、アメリカには民主主義が根づき、社会の欲求不満の水準は、きわめて低かった。


さらにこのようなアメリカの社会構造は、他方において、種々の国民的権利が実現されていたという事実によって、一層強化されていたのである。そして以上の条件はフランスにおける、諸集団の孤立化と闘争の激化という条件とは逆に、高い政治参加というアメリカの政治文化の特徴となって現れていた。そしてアメリカ社会のこのような構造は、過激なイデオロギーを排するアメリカ人の、穏健でプラグマティゴリカにおける、政治的安定を支えることになったのである。


— posted by wgft at 11:23 am