「人道復興支援」の実態

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むしろ軍事介入こそテロを醸成する社会や文化の対立を悪化させかねない。これは、戦争と占領と蛮行を経験した欧州の「古い国」フランスからのメッセージである。」(国連安保理、2003年2月15日)

ドビルパン演説は武力行使に同調しないフランスなどを「古い欧州」とあざ笑ったラムズフェルド国防長官に対する正面きった反論であった。このスピーチは、国連加盟国に深い感動を与えた。アメリカが求めた制裁決議不採択を決定づけた演説といわれている。ドイツのフィッシャー外相もおなじ立場から武力制裁に反対した。

「わが国はフランスの提案を強く支持する。平和的手段による可能な限りの解決を目指そう。軍事的行動は地域の安定を危険にさらし、破滅的な結果をもたらす。自動的に軍事力の行使をしてはならない。外交努力の道はまだ残っている。」フィッシャー外相は、この演説の前、ラムズフェルド国防長官に「申し訳ないが、私には納得がいかない。納得がいかないものを国民に説明することは出来ない」と直言したという。小泉首相の安保国益論とは全く違う世界観がそこにみえる。

このような経過で、国連憲章にもとづくイラク武力制裁という事態ははばまれた。だが、アメリカは「有志国連合」による開戦に踏みきる。日本はそれに追随した。小泉首相は、さきのアフガニスタン攻撃支援のさい、「憲法の前文にありますとおり、国際社会において、名誉ある地位を得たいと謳っております」とアメリカへの同調に胸を張った。

だが、イラク戦争で憲法前文の精神を国際社会で実践したのは日本ではなくフランスとドイツの方だった。では、イラク派遣自衛隊はイラクで何をしてきたのか?その活動は復興援助と人道支援にどれほど役立ったのだろうか。国会に提出された防衛庁資料によれば「自衛隊のイラク派遣に関する経費」は表のとおりである。

4年間の予算を合計すると868億円(隊員の本給は除く)にのぼる。このうち、一体どれだけがイラク社会の復興に充てられたのか。防衛省は詳細な内訳を明らかにしないので正確な全容を掴むとはできない。

ただ、2006年3月末時点で総経費中、派遣隊員の手当(1日2万円)が232億円、営舎費63億円、器材購入費109億円、運搬費117億円、通信維持費62億円、車両修理費18億円とされる。これだけで481億円になる。

2005年度までの経費(743億円)でみても、実に60%以上が隊員の手当や生活費など駐留経費に消えたとわかる。住民のための復興援助が目的なら、もっと効率のよい方法があったはずである。具体的に援助の一部を点検してみる。

これに対し任務終了時点での完了実績(毎日新聞2006年8月7日付夕刊)をみると学校(36ヵ所)、道路、橋(31ヵ所)、医療施設(30ヵ所)、給水施設(24ヵ所)、文化施設(22ヵ所)となっている。

政府答弁書ではムサンナ県には約350校、サマワ市には約140校の学校が存在し「その過半について、復旧・整備が必要である」とされていた学校の復旧整備だけ取りあげても実績は必要の半分にも満たなかった計算になる。2年半、6,000人、743億円でこの程度なのかと誰もが感じるだろう。

— posted by Arquite at 11:07 am