血塗られた権力闘争の歴史

西欧の歴史は一面で血塗られた権力闘争の歴史でもあった。この「権力闘争」の歴史こそが、西欧文明の要塞化を押し進めたもっとも大きな要因であったことは疑いない。「権力闘争」のうず巻く文明では、個人も共同体も国家社会も、まず敵ないし敵となりうるものからの防御力と反撃力を自覚的に高める「作為」なしに生き残ることは不可能だったからである。

むろんわが国もまた「神代の昔」から今日まで血塗られた「権力闘争」を繰り返してきたのだが、「権力闘争」が実際にはあるのに、あたかもそれがないかのようにあいまい化する心理的装置が常に働いてきた、という点で西欧文明とは明らかに異質であった。これを「権力闘争ぼかし」と呼べば、この「権力闘争ぼかし」もまた日本の神々を源に発する日本文明の大きな特質なのである。日本神話の「中空構造」もまた「権力闘争ぼかし」の一つだと考えている。


しかし、史上未曾有の八一年の最高潮に到達する前にかなり劇的な曲折があったことを知らねばならない。その第一は次表の世界の経常収支(各国の国際収支のうち資本取引を除いた、通常の国際的取引収支尻)の推移表をみていただきたい。世界はOECDを主たる中心として動いているという今までの常識が、こっぱみじんに打ち砕かれた日が二度きたのである。いわゆる第一次オイル・ショック(一九七三年末)、および第二次(一九七九年)の襲来であった。



「どうして神様はアラブの地に石油を恵んだのか」という西側の怨嵯の声が起きたほどである。当該年度にOPEC諸国に累積された巨大な黒字と、その反対にOECD先進諸国を襲った巨額な赤字を一覧するだけで、まるでタダと思われていた原油が一挙に世界経済を破滅の淵近くまで追いつめ、その後ながく続く低成長・失業・国際収支の赤字・インフレという四重苦をもたらした事実がわかるであろう。


— posted by wgft at 11:04 am