十分な配慮のもとで催眠療法は行われる

催眠状態になると思わず心の秘密をベラベラとしゃべってしまうかもしれないと怖がる人が多い。こうしたことは心理治療のように、心の秘密を告白しても、それが治療者によって十分他言せず守られる場合であれば、ちょうど医者になら人前で見せるのをはばかる身体の部分も見せるように話すことができるだろう。


しかし、そうでない場合で、催眠状態になっても、言いたくないコトは、やはり言わないモノだ。催眠を実施する人も治療という専門上の必要がなければ、やたら心の秘密に触れるべきでないことは言うまでもないだろう。


このような十分な配慮の元で催眠療法は行なわなければならない。催眠に導く条件は暗示が安心して受け入れられるくつろいだ状態にすることが第一である。したがって本人がちゃんと承知しなければ催眠療法をやってはならない。


次に、本人の注意を集中させることである。このために19世紀のイギリスの外科医、J・ブレードが用いた「凝視法」と呼ばれるものがよく使われる。これは椅子などにゆったり座らせ、目の前になにか小さな物体、例えばネクタイピン、万年筆の先、画びょう、指先などをかざし、じっとそれを見つめさせ、段々まぶたが重くなる、目が塞がってくる、目が閉じてしまう・・・と繰り返し暗示する方法である。


そうすると物体の周りがボンヤリしたり、ハッキリしたりして、時には瞬きが多くなり、自然に目が塞がる。視覚的なものでなくて、目を閉じさせ、一定の音に注意をさせるのもよい。メトロノームや時計の音、机の上を鉛筆などで叩く音などを利用してもよい。


もう一つ、よく使う催眠誘導法は観念運動を利用する方法である。その中の「後倒法」は、目を閉じ、直立した姿勢で立たせ、次第に身体が後ろへ倒れてくる・・・と繰り返し暗示する。




— posted by wgft at 11:11 am