マネーの原理が暴走したから、世界は混乱したのである

日本に紹介されないソロス氏の一面だが、大手ヘッジファンドは大体似たような行動パターンをとっていると見て良いだろう。彼らには大手金融機関も出資しており、しばしば何らかの政治的意図を体現しているように見える場面もある。

だがソロス氏も言うように、彼らはあくまで「金儲け」のために動いているのであり、政治的原理よりマネーの原理に従っていることは疑いないだろう。マネーの原理が暴走したから、世界は混乱したのである。

ではなぜそういうことが可能だったのか。ヘッジファンドが時には実態以上に不気味に思われるのは、一つには彼らがデリバティブという、これまた正体の分りにくい投機取引に参加しているからである。それがわれわれと無縁の世界での出来ごとなら何の問題もないが、現実にそうも行かないから困るのである。

資本主義経済には景気循環その他、波(変動)が付物だが、あらゆる投機はこの変動の上に成立している。物価でも株価でも為替でも金利でも、安定したままでは投機は成り立だない。

ヘッジファンドの出番はないのである。その意味では、投機は資本主義経済の必然的副産物ともいえるのだが、それにしてもここ数年の為替や株価の変動は、もはや乱高下といって良い。

実はそれもまた、デリバティブという極めてリスクの高い金融取引が、世界を舞台に行われているためである。こうした取引が行われ、しかも誰もチェックできないこと自体が、現在の国際金融システムの根本的欠陥といえよう。

そのことの危険に気づかなければ、何十兆円の公的資金を投入しても、日本経済の再生にはつながらない。日本人の資産はデリバティブ取引で大儲けを企む海外のヘッジファンドの絶好の標的にされている。

日本の国内にも問題は山積しているが、それらを圧倒して余りある「デリバティブ」と「ヘッジファンド」という妖怪について、われわれはもっと知らなければならないだろう。


— posted by wgft at 11:49 am