山川均氏の歴史的な論文「非武装憲法の擁護」

講和についての論議は果して真実不活発なのであろうか。それとも論議は各所に活発に行なわれているにも関わらず、それが広く紹介されないのであろうか。言い換えれば論議の不活発ではなくて報道の不活発があるのではないだろうか。宗教団体の動きや、労働組合の動きは私たちの知る限りでも国民が決してこの問題に無関心ではないことを示している。

確かその年の7月上旬のことであったろう。ある朝、編集部で誰からともなく講和問題の特集号を出そうという声が上がった。あとから考えてみても編集部の全員がそれぞれ自分が言いだしたような記憶しか残っていない。

私自身も焦燥感にかられ、特集号を出せないものかと一晩中考えつめていた記憶が今なお生々しく残っている。特集号のプランは吉野さんを中心にして慎重に練られ、なんとかして講和会議の開かれる前に発売できるように印刷所との打合せも進み、私たちは暑い夏をかけて、この特集のために立ち働いた。

学術専門誌ではない一般月刊誌が次号の内容についてほぼ完全な形で前号に予告を出すことは私の経験からいえば、なかなか困難なことなのだが、改めてこの年の9月号を見てみると、ほぼ完全に近い形で講和問題特集号の予告が載せられている。

山川均氏の歴史的な論文「非武装憲法の擁護」は8月に入って掲載が決められたので、この予告には入っていない。つまりプラン実現の見通しが7月末には出来上っていたわけだが、このことは極めて短時日の間に百余名に及ぶ執筆者の協力が得られたことを物語っている。

— posted by Arquite at 04:09 pm